【新2回】貧しき港町
大体ね、港町なんてのは貧乏なのよ。横浜なんかその典型だからね。
そもそも港町ってのは、みんな食いっぱぐれて「稼ぎに」来る所だから。しかも、ちょっと稼いで船賃を溜めたらどこかへ「もっと稼ぎに」行っちゃう。だから、残るのは、よっぽど町が好きか、あるいはいつまでたっても船賃の溜まらないヤツね。
港町では「どこから来たの?」なんていちいち聞かない。だって、みんな「どこからか来た」人だからね。そのかわり「今、何をしてるか」は大事。会うたびに違うことやってても、全然不思議じゃないしね。
いろんなヤツがいるよぉ。混血なんて珍しくない「おまえドコのブチ?」なんて平気で聞いちゃうんだから。ブチって何?「斑」のこと。混血ってことよ。わかってんの? 「オレさあ、母親はチャイナなんだけど、オヤジはポルトガルらしいんだよなあ。会ったことないんだけど」なんて会話があるわけよ。
港町は人も物も情報も「入って、出てゆく」ことで生きているのよ。でも、誰も町を盛り上げようとして何かを持ち込むなんてことはしない。だから、他にもっといい場所があると、みんな捨てて行ってしまう。それが港町だからね、しょうがない。残ったやつらは、なんとか生きていかなきゃならないからあれこれ工夫するけど、ノスタルジアに入ったらもうおしまいだね。だって、ノスタルジアには「出入り」がないもの。過去から入って、過去へと出てゆくだけでしょ? そんなに深い伝統があるわけじゃないから。
港町がうまく行ってる時って、自然と役割分担がうまくいっって、人も情報もモノもくるくる動くわけ。だから、誰も遊んでる暇がない。どんなつまんないヤツでも何か仕事はある。商才があればビジネスの全面に立つし、度胸のある奴ならいろんな差配で稼ぐ。顔のいい奴ならバーやクラブで仕事がある。女なら街角に立つこともできるし、男なら石拾いから仕事がある。
ただ、うまく食えないやつは「何やってるのかわかんない奴」ね。つまり、誰もが「こいつにどんな用事を振ったらいいのかわからない」わけ。だから「食わせられない」。せめて「何がやりたいのか」でもわかればいいんだけど。でも、やりたいことと向いてることって、大抵、違うからね。
そういう奴以外は、みんな働くよ。だって、金が欲しいから。
それに、稼ぎたい奴のためのいろんなシナリオが町中にはあるのよ。いろんな成功談や失敗談だったりするけどね、みんなよく話をするねえ。そして、話をしながら「次は俺ならこう動いてうまくやってやるのに」なんて思ってるよ。ココロココニアラズさ。
生きてゆく、それも「急いで生きてゆく」には劇化するのが一番だね。だから、今なら六本木ヒルズなんてのは一番劇化しやすいんじゃない? いや、劇化するように切り回してる奴がいるよ。 マスコミも一緒になってるからね。現代の港町かもしんないよ? 情緒はないけどさ。
いずれ廃れるのよ。港町だから。
廃れたらどうすればいいのかって? それは「劇化」のフォーメイションが崩れているだけさ。次回、どうすればいいか話をしてあげるよ。ほら、早く電車乗んな。アバよ。






