様々な制度や方法論が行き詰っている。やみくもに前に進んでいればそれなりにつじつまが合う時代は過ぎ去った。
時代は「編集」を求めている。
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A■編定(縮めて伝える) 編定・要約・凝縮・翻訳・結合 I■境界(区切りを変える) 境界・場面
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C■順番(繋げて較べる) 順番・規則・交換・競合・比較・共鳴 K■諧謔(おおげさにする) 歪曲・不調・輪郭・諧謔
D■暗示(含みを持たせる) 暗示・相似・擬態・象徴 L■形態(構造を見つける) 構造・形態・生態
E■引用(盗んで補う) 比喩・推理・引用・例示・補償 M■劇化(物語で遊ぶ) 筋道・脚本・劇化・遊戯
F■注釈(付け加える) 注釈・付加・削除・拉致・保留・代行 N■綜合(みんなまとめる) 総合・創造
G■模擬(測って調べる) 模擬・測度・強調・変容 △■編集思考素

2006年10月26日

Ⅱ 教育の現場から-35.3冊目の上梓

3冊目は’05年、目標の3月21日から1ヶ月あまり遅れての刊行となった。今回は、「ホンダのデザイン戦略経営」というタイトルで日本経済新聞社からの出版。遅れた理由のひとつに、共著の難しさが挙げられる。立命館大でお世話になった教授と助手(先述の若い博士)、そして私の3人による合作というわけ。
面白いことに、上梓を計画した当時の私は60代に入ったばかり。教授は40代前半、助手は20代半ばと、それぞれに20年近く年齢が違い、しかも、美術学部、工学部、経営学部と出身や専攻を異にし、考え方も三者三様で、それぞれに個性的であった。職人肌と学者肌、直感型と分析型、年季者と新参者、等々のごとく。作業は、かならずしも順風満帆ではなかった。
原稿が揃ってからも、半年以上七転八倒の調整が続いた。が、時間が経つに連れ、世代や専門を超えてのこの作業は、ことによれば、これからのデザインに期待される、「インターデシプリナリ」なマネジメントの体系つくりができるかもしれない、という期待が湧いてきた。
芸術、工学、経済、情報、これらを繋げて、新しい価値である「魅力」をつくっていくことが、これからのデザインの役割となるだろう。デザインが「魅力価値創造学」といわれる所以もここにある。異質のものが、デザインによって繋がり結ばれ新しいものが生まれる、こうした「縁」という日本の伝統的な考え方が、これからのデザインを考えるためのキーワードとなるに違いない。
「デザイン」とは、意図し、計画し、表現すること。「マネジメント(経営)」とは、力を尽くして物事を営み、継続的・計画的に事業を遂行すること。「デザイン・マネジメント」をテーマにした本著はかくして出来上がった。そしてこの作業を通じ、自らの想いを相手に伝えることが、なんと難しく、なんと楽しいことかを実感した。
本田宗一郎をはじめ先人たちがつくり上げた「デザインオリエンテッドな企業経営のあり方」を体系立てて示すことで、モノつくりや企業経営を志す人たちに、「デザイン・マネジメント」の何たるかを伝えたい、という共通の目標が難しい共創を可能にしたのだと思う。

2006年10月19日

Ⅱ 教育の現場から-34.知識と知恵

学生たちのみならず我々は、先人がつくりあげた学問を先生や教科書によって「知識」というかたちで学ぶ。言うならば、すでに掛けられている「学問の梯子」を途中から登り始めるということだ。定理や法則はそのまま用いればよい。一方、職人やデザイナー、画家や演奏家、語学もそうだが、こうした技術は「体で覚える」しかない。
だから目標とする名人の技は、ゼロからの修練を重ねなければ身につかない。中には生まれながら才能に恵まれた人もいるが、普通はそうではない。「模倣」するにしろ「伝授」されるにしろ、目標に向かって掛けられた「技術の梯子」は、一番下から登らねばならない。
さらに「心を込める」にあたっては、どんな「心」をどのように込めるのか。他人の心は見えないし自分の心を見せることも出来ない。つまり「真似する」ことも「教える」ことも出来ないということで、結局「心の梯子」は自分で自分の目標に向かって掛け、一番下から登らなければならない。
 同じ「モノつくり」でも、一つ一つを手づくりで仕上げる職人の仕事と1ロット何十万という単位の大量生産に関わるデザインとは、一見全く違う世界のことのように感じられるが、どちらもその根本は同じである。
デザインの「知識」や「技術」は、学校で学んだり先輩から教わったりするなど、繰り返し練習すれば身に付けることができる。ところがいくら本を読んでも先生に教わっても、身につかないことはたくさんある、というより、こういうことの方がはるかに多い。
どんな仕事でも、自分の頭で考え心を動かさなければよい結果は残せない。これが「知恵」というものである。そしてこの知恵は、こうしたい、こうしてあげたいという[想い]によって引き出される。つまり「想い」は、知識の詰った蔵の扉を開ける鍵であり、知識が外に飛び出たとき、たちまちそれが知恵に変わるのだ。
この豊穣の時代に、「想い」をどのようにして学生たちに抱かせるか。心を動かし揺さぶる「豊かで刺激的な教育の場づくり」を急がねばらない。

2006年10月12日

Ⅱ 教育の現場から-33.「つくる」ということ

学生たちのレポートを読むと、「創」という字がやたらと登場する。よほど気に入っているらしい。「創」は「つくる」とも読む。「つくる」と言えば、虫も獣も巣をつくるが、彼らは本能に従ってやっていること、意志(こころ)を持って「モノづくり」をするのは人間だけであると、私は、そう思っている。
言い換えれば人間であれば誰でも、「野菜や米」「衣服や料理」「詩歌や絵画」「いろんな工業製品」など、何らかの「モノ」をつくり出す。「つくる」には主に「創る」「造る」「作る」の三つの字が当てられるが、「つくる」という人間の営みをこの3つに分けること自体が大変に難しい。
私自身もこれまで、コンセプトやデザインを「創る」、金型や製品を「造る」、クレーモデルやモックアップモデル「作る」という風に、仕事の中で使い分けてきた。また「創」「造」「作」は、「創造」「創作」「造作」のように組み合わせて使われるが、それぞれ、微妙に意味が違う。「創」には「はじめて」、「造」には「大きなもの」、「作」には「ひとりで」という意味が込められているようだ。
このように考えると、「創」は頭を使って、「造」は工具や機械を使って、「作」は人の手でという感じもする。英語でも、「創る」はクリエイト、「造る」はビルド、「作る」はメイク、などと。さらに、「創る」「造る」「作る」の三つには、表面的な意味の違いだけではないもっと複雑なニュアンスの差が含まれていそうだ。たとえば、「創る」は人間にしか出来ないという意味合いから、他の二つに比べて幾分「高級」な概念と受け取る人もいるはず。
仮にそうだとすると、一般に「作る」という字が当てられる手仕事は、高級ではないということになる。が、それは、それぞれの人の専門の違いだけであって、むしろ、手で覚えながら頭を鍛え心を育むというのが、「モノづくり」に対する私の信念としてきたところである。最近私は、よほど専門が明確で一般的でない限り、「つくる」と平仮名で書くことにしている。

2006年10月04日

Ⅱ 教育の現場から-32.「一力」の想い出

「一力」に行くのはこれで2度目。一度目は10年ほど前、現役時代に某織物会社の社長さんに連れられて。今回は、立命館大学淀屋橋校の学生たち数名とである。そもそも、どうして我々ごときが、このような超のつく高級料亭に行くことになったのか、少々触れておきたい。
‘04年春、一期生の進級を祝って、祇園で祝宴をはろうということになった。案内状には、「一力」の傍の「何々」と書かれていた。一杯機嫌の帰り道、「一力」の前にさしかかったとき、通りに面した駐車場に、赤と白のホンダS-800が2台並ぶのを発見。思わず立ち止まって学生たちに、「これはね、私が20代の半ばにデザインをした車なんだ」と自慢たらたら。
みんなで、無断で記念写真を撮り合い、「誰が乗っているのだろう」と興味津々。帰りの道々、ひんやりした春風に吹かれながら、この次は私の博士号祝いで本物の「一力」だね、と冗談を言い合って別れる。みんな「一力」は、振りの客が行けるところでないことは承知していた。しばらくして学生の一人からの情報で、2台のS-800は、「一力」のご主人と息子さんの持ち物であることが判明。
夏も終わりの頃、幹事役の女性から朗報が入った。学生の一人に、日本を代表する帯の老舗の御曹司がいて、彼の計らいで「一力」詣でが可能になったという。想いは通じるものだ。京都のこの手の料亭には、株を持たない客は入れないというしきたりがある。思いもよらない幸せ切符を手にしたわけだが、決行までに、充分お金を貯めておくようにとの添え書きがあった。
決行日は12月14日と決めた。言わず知れた四十七士討ち入りの日である。予算が高いので集まる人数を心配したが、主任教授と私を含め7名の参加となった。退院間もないご主人(だんな)、奥さま(おかみ)、それに息子さんとご家族総出でお相手いただいた。伺えば昔、本田宗一郎さんが見えて以来の熱烈なホンダファンだとか。ここでも本田さんのお蔭をいただいた。


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