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Ⅳ CIVICデザイン物語(初代シビック)          第4話.異質併行

「ふたつとも、あんまり違わないねえ」と、両方のモデルを見比べながら研究所所長が不機嫌そうに。初代「ホンダシビック」のデザインは、当初から2つの案で進んでいた。この頃から始まった施策の一つ、「異質併行」開発による。
両案は全長で100ミリぐらいの差があり、長い方を「1案」、短い方を「2案」と呼んでいた。私はその2案を担当。1案は屋根が低く「フォードピント」のような格好良さがあった。2案は1案に較べ、短い全長で居住空間を確保するため屋根が20ミリほど高く、プロポーションはどう見ても「ホンダライフ」の兄貴分くらいにしか見えない。
ピントのような格好良さを横目に、長さの威力を痛感し、このままではどうしても1案のスマートさには敵わないと思っていた。自分としてはその位大きな「違い」があると感じていたのだが。
所長の指摘に悩んだあげく、開き直って、短い長さをさらに100ミリ切ってしまおうと決心。全長を伸ばしたいという気持ちに逆らうことで活路を求めた。
これはもとはと言えば、「大きくしたくない」との考え方に端を発している。が、決心するには勇気が要った。恐る恐る「よろしいでしょうか」と所長に伺うと、「やっとその気になったか」と。
おそらく1案の存在がなかったら、とてもこのような大胆な決心は出来なかったろう。また常に難しい判断を迫られている所長にとっても、1つのモデルだけでは決断が難しかったと思う。
このことは「小さくしたい」という当初からの狙いに合致し、チームの仲間からも歓迎された。反面、さらに全長を短くして、本当に「格好がつくのか」との不安を誰もが抱いた。
私は当初から、こんなディメンションでは「格好のいいものは出来ない」と言ってきた。それでいて自分では、ピントのような当世風の「格好良さ」に拘っていたのである。
自分が心底信じていないのに、他人を説得できるわけがない。また短くした理由を、1案に対し相対的には説明できても、絶対的に良いかどうかと問われると自信のある回答はできなかった。自問自答の末、自らが信じられる言葉にしてチームのみんなに説明して回った。
全長を短くすることで判ったことそれは、平面図で見ると縦横比が座布団のごとく四角形に近づき、立体で見ると台形感が強調されるということ。何やら特徴が出せそうな予感が。間もなくモデルは一つに絞られる。コンセプトが形に表現し易い、との判断で2案の方が選ばれた。

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