Ⅳ CIVICデザイン物語(初代シビック) 第10話.ずんぐりむっくり
初代「ホンダシビック」のクレー(粘土)モデルを眺めながら、「どう見てもずんぐりむっくりだねえ。これじゃ、格好いいとは言ってもらえないだろうな」と研究所常務。そろそろザインを決めるタイミングにあった。私は率直に、「そう思います」と。
基本骨格の検討段階から較べ、エンジンとミッションの長さが次第に伸び、それにつられ車幅もどんどん広がっていった。もともと長さの短かったこの車の「ずんぐり度」は日毎に高まっていく。エンジン屋を恨んでいると言いながらその実、「格好良さ」は最初から諦めていた。
このディメンションでは、到底カッコいい車はとても望めないと開き直って、初めのうちは「アウトビアンキの走りに相応しい外形を」と、頭では割り切っていたもののやはり面白くはない。
デザイナーが格好良さを諦めたのだから当然のこと、毎日が憂鬱で気持が高ぶらなかった。こんな状況を早く払拭しなくてはと考えた末、この骨格で格好よく見せるには、伝統的な格好良さとは次元の違う、例えば「すごく高価な車」とか、「別格な特徴を備えた車」に縋るしか手がないと思いはじめた。
ずっと頭の中では、トロネードの尻尾をちょんぎってボンネットを短くし、手のひらでグーッと握ったような形にすれば、何か新しいものがつくり出せるんじゃないかと思っていた。が、「アウトビアンキの走り」に「トロネードの外観」ではあまりにも露骨で、ただの物まねではないかとも。
が、よく考えると、全く同じ車をつくる訳ではないし、面の張りなど断面の傾向を参考にするのは、工夫であって決して「物まね」ではない。もしこれを「物まね」と言うのなら、車輪が4つあるのも「物まね」ということになる。こう思った途端すっかり気分は楽になった。
そこで思い切って、「トロネードのホイールアーチを、そのまま付けてやろう」とか「このテールランプをアメ車のようなメッキモールで、ギラっと決めてやろう」などと、一見むちゃかも知れない組み合わせに挑戦した。これによってずんぐりむっくりでも寸詰まりでも、存在感のある踏ん張りの効いた形がつくれるのではと。
シビックのホイールアーチやテールランプなどの特徴や存在感は、こうしたせっぱ詰まった開き直りの産物である。高価な車の「借り物」だが、誰もそうとは気が付かない。使いようによっては、そんな「物まね(嫌な言い方だが)」もあるのだと気付き、その後デザインをする上で大いに役立った。






