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Ⅳ CIVICデザイン物語(初代シビック)                 第11話.小さくていばれる車

「どんな車にするんだよ」と研究所常務に聞かれる。初代「ホンダシビック」の基本的なディメンションやハード(機能)要件の検討が進む中、このクルマの「在りたい姿」についても次第に絞り込んでいった。
どんな車かと、「一言」では中々言えないまでも、「家には芝生の庭があって、駐車場もあって、お父さんがベンツに乗っていて、僕はセカンドカー(シビック)に乗っている、という風に見てもらえる車」、たとえシビック1台しか持っていなくても、家にはきっとベンツがあるんだろうな、と思わせる車」にしたいと。
一見して、そう感じられる車にするのは大変なことである。そんな時ふと、「ホンダモンキー」なら、「ナナハン(ホンダCB750)」と並んでも引け目を感じない、シビックもそんな風になればと考えた。ベンツと並んでも威張れるようにしたいなと。「小さくていばれる車」というコンセプトは、こうしたチーム全員の気持から生まれた。
そのために、0,7ミリの薄い鉄板であっても放物線断面にすることで、いかにも鉄板が厚そうに見える「張り」を出したり、下塗りの新手法を開発し2コート2ベーク(2回塗り2回焼き付け)の塗装で、ベンツの4コート4ベークと見紛うくらいの「琺瑯(ほうろう)感」を出したりと、鉄板や塗膜を厚く見せるための工夫を凝らした。
またメッキは高級車の特権のようなものだが、やたらと付けるお金もない。そこで光りものは一点集中と決め、テールゲートやランプのモール類、フロントグリルモールやセンターマークなど、大げさに感じるくらい「ぎらっ」とさせた。こうした手法で小さい車でありながら存在感を主張した。
努力はしたが、やはり大きさの持つ存在感の前には何ともし難く、悩みに悩んでホンダモンキーに戻る。「何であいつはナナハンの前でいばっていられるのか」と議論。出てきた意見は「可愛い、個性的、利発」となり、総じて言えば「愛着がある」であった。
「こんなもの形にできるのか」と、またまた難しい議論になる。そんな時、平尾昌章の「ぼーくの可愛いミヨちゃんは、色が黒くて小さくて、つぶらな瞳に出会うとき…」の歌が。「そうだ、瞳だ」と思い立ち、ヘッドランプが大きくつぶらに見えるように。
また犬や猫などのペットを可愛がって撫でたり、馬や愛機(戦闘機など)に「良くやったぞ」とポンポンとたたくシーンを頭に描き、どんな形どんな面がいいんだろうと考えながらデザインをした。

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