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Ⅳ CIVICデザイン物語(3代目シビック)         第41話.禁じ手

何故こんなに、量産立ち上がりが難しくなってしまったのか。振り返って考えてみると、今回の3代目「ホンダシビック」のデザインは、カーメーカーの中では「禁じ手」とされている手法を多用して、「新しさ」を出そうとしてきたところがある。
若いデザイナーなら、怖いもの知らずとか若気にはやってだったりして、一度はやってはみるものの二度とはやらないという危なげなデザイン手法であった。2代目シビックの評判がいま一つで、開き直って挑戦した結果であり、一口に言って「木箱デザイン」だといえる。
そもそも、モノコック構造(ボディーのみでつくる一体構造)の理想的な形は「卵形」。が、これが木箱のようなつくりだと、見るからに弱そうである。事実、昔のりんごやミカンの箱(今は段ボール製になったが、昔は木箱だった)は、蓋を外して力をかけると、すぐばらばらに壊れてしまう。
この3代目シビックの、フルドア(ドアとサッシュを鉄板で一体につくる)とサイドパネル(ボディー側面の鉄板)、サイドパネルとテールゲート(後部跳ね上げ扉)、リヤークォータガラス(後部側面窓ガラス)の合わせ方は、木箱の構成と似ている。
それに、パネルや艤装部品の接合部分が、「田の字(4つの部品の角を1点で合わせる)」状になっているところが多い。これも、合わせが難しくなるので、避けるべき手法と言われマニュアルにまでなっている。
また、初代のアコードやシビックの「盛り」のデザインと違って、今度は、どちらかと言うと「削り」のデザイン。ひとつ間違えば、痩せぎすの面が災いしてブリキ細工の玩具のように見える。分かっている人なら手を出さないやり方だと言われる所以は、こういうところから来ている。
削りのデザインは、シャープさや切れ味のよさは表現しやすい。が、盛りのデザインに較べ、金型をつくるのも、溶接治具の調整も、組立ラインでも、余分な神経を使う。日本の、マザー工場である鈴鹿工場だからできたと言えるだろう。この精度をつくるため、鈴鹿では、このころ始めて3次元測定器を導入していた。
また鈴鹿では、熟練の力を借りて乗り切った。が、一般論として、禁じ手に敢えて手を出すときは、何か新しい武器(生産技術や検査治具など)を手にしないと無理なようである。HAMでの苦労は、デザインの斬新さを出したいがための代償。因果がここに巡ってきたと、そう思って、これは「やるしかないな」と覚悟した。

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