様々な制度や方法論が行き詰っている。やみくもに前に進んでいればそれなりにつじつまが合う時代は過ぎ去った。
時代は「編集」を求めている。
メルマガ登録はこちら
▼サイト内検索 (※試作中)

☆■収集(分けると分かる) 収集・選択・分類・流派・系統 H■焦点(ニュースにする) 焦点・報道・統御
A■編定(縮めて伝える) 編定・要約・凝縮・翻訳・結合 I■境界(区切りを変える) 境界・場面
B■原型(型にして見る) 原型・模型・適合・列挙・配置・意匠・装飾・図解 J■周期(リズムをつける) 周期・曲節
C■順番(繋げて較べる) 順番・規則・交換・競合・比較・共鳴 K■諧謔(おおげさにする) 歪曲・不調・輪郭・諧謔
D■暗示(含みを持たせる) 暗示・相似・擬態・象徴 L■形態(構造を見つける) 構造・形態・生態
E■引用(盗んで補う) 比喩・推理・引用・例示・補償 M■劇化(物語で遊ぶ) 筋道・脚本・劇化・遊戯
F■注釈(付け加える) 注釈・付加・削除・拉致・保留・代行 N■綜合(みんなまとめる) 総合・創造
G■模擬(測って調べる) 模擬・測度・強調・変容 △■編集思考素

2009年04月29日

Ⅴ ACCORDとその仲間たち(3代目アコード)                        第16話.ダブル・ウィッシュボーン・サス

プレリュードのような低全高スタイルを求め、前後のシートの位置を下げ、しかもファミリー4ドアセダンとしての居住性を確保しようとすると、当然、ホイールベースやルーフ長が伸びる。結果、ホイールベースは回転半径に、ルーフ長はシルエットに大きな影響を及ぼす。
もちろん、屋根を下げると、乗り降りの際の頭の抜きに大きく関わってくる。一つのことをやろうとすると新たな難題にぶつかり、それを乗り超えるとまた次が、という具合であった。こうしたジレンマを抱えながら、3代目「ホンダアコード」の企画検討が進められた。
次々に現れ出る難題に立ち向かう度に、積み重ねてきたパッケージづくりのノウハウや、「MM(マンマキシマム/メカミニマム)思想」で蓄積された様々なコンパクト化技術に助けられる。
乗り降りに必要な開口部を確保するため、あの手この手を考えた末、「モヒカン(ホンダH1300クーペで開発されたルーフモール)」をうまく使った4ドア用廉価型フルドア方式が考案された。
苦肉の策ではあったが、このフルドアの採用で、ボディ面とガラス面の段差が少ない「フラッシュ・サーフェイス」が可能となり、スタイルの「新しさ」を生み出すことが出来た。
企画評価会は、その明快なコンセプトとデザインの斬新さで、一発で通った。但し、「コストはこれからの努力」との指示をいただく。新しいアイデアは、ほとんどの場合コストアップに繋がる。
今回も、いろいろとやってみたが、あと数千円のところがどうにもならなかった。とうとう系列LPLと所長室から、「コストを下げ切れない要因は、ダブル・ウィッシュボーン・サスペンションにある」との判断が下され、チームは泣く泣く、コストの安いストラット・サスペンションに、急遽切り替えることになった。
その理由は、「この車のために開発されたダブル・ウィッシュボーン・サスペンションは、ファミリーカーとしての乗り心地を重視したため、構造本来の際だった走り味が薄まり、新しい価値を創出していない。また、ボンネットの高さを、たかだか30mm程度下げるためと言うだけでは、スタイリングへの寄与も少ない、したがってコストをかける意味がない」、と言うことであった。
私はこの判断に猛反対したのだが、コストを下げる代案を持たなかったこと、それに「お前ごときに、サスを決められてたまるか」との一喝で、すごすごと引き下がらざるを得なかった。

2009年04月22日

Ⅴ ACCORDとその仲間たち(3代目アコード)                  第15話.「プレリュード・4ドア」

「おい、次のアコード、どうするんだよ」と、通りすがりざま本田技研専務に問いかけられた。ここのところずっと考えていたことだが、まだ、これだと言えるほどの、確たるイメージが描けていない。
返答に困り咄嗟に、「プレリュード・4ドアで行きます」と言ってしまった。すると即座に、「いいかもね」と。「まずい!」と思ったが、もう遅かった。2代目プレリュードが世界的にヒットし、ことに日本市場では、ベルノ店が一気に息を吹き返していた。余勢を駆ってつくった役割明快・3代目「ホンダシビック」も、出だしはすこぶる好調。もう、次のことを考えておられるのだ。息もつかせてもらえないなと思った。
しばらくして、3代目アコードの開発チームが発足。私は今回もLPL(機種開発責任者)代行を仰せつかる。 2代目プレリュードの人気にあやかりたい気持ちで、「プレリュード・4ドア」と言ってしまったのだが、みんなに先入観を与えてしまったようで、少々後ろめたい気持ちでいた。
シビックの開発を通じて、車はみんなでつくるものととことん教わったはず。LPL(2代目プレリュードに引き続き)はそのあたりを察し、最初のミーティングでまずこのことに触れ、みんなの意見を聞いてくれる。ところが私の心配をよそに、チームのみんなからは、「ホンダらしいスポーティなセダンにしたい。2代目プレリュードのように挑戦的にやろう」と、前向きに賛同してもらい胸をなで下ろす。
ただ、みんなが一様に心配したのは、このコンセプトをこのまま進めて行って、ファミリーカーとして充分な居住性が本当につくれるのか、また、リーズナブルな価格を設定するためのコストに間違いなくおさめられるのか、という二点だった。
2代目プレリュードは、スペシャリティ・カーとして、この二つの課題に多少目を瞑ったところがある。どうやら今回は、これらの克服が、このプロジェクトの最重点課題になりそうだと直感した。
若者をターゲットとした2代目プレリュードのヒップポイント(シート座面の高さ)は極端に低い。筋力の弱ったお年寄りにとって、低い屋根や低いシートの車への乗り降りには苦痛を伴う。アコードはファミリーカーであり、あらゆるひとの乗り降りに配慮するのは当然のこと。だから「スポーティなセダン」とは言え、フロントはともかく、リアのヒップポイントをどこまで低く出来るかが、パッケージ・レイアウトの鍵となった。

2009年04月15日

Ⅴ ACCORDとその仲間たち(2代目プレリュード)              第14話.七度目の正直

2代目「ホンダプレリュード」の企画案、これまで何度評価会に臨んでも、評価委員長(本田技研社長)からは「うん」とは言ってもらえない。すでに6回を数えていた。その理由が「インパクトが足りない」であることは、チームも重々承知。
評価会が差し戻しになる度に、次回の評価会までには、デザインの明確な特徴付けや、エンジン性能のさらなる向上にと努力を重ねてきたが、何回やっても結局のところ、改良としか受け止めてもらえなかったようだ。
それに反してコンセプトの説明資料は、想いだけがエスカレートして美辞麗句の羅列となり枚数も増える一方で、評価会の度に「実体」とは乖離して行った。そして今回はとうとう、「言っていることと、やっていることが違うじゃないか」と言われてしまった。
「やってる」ことに「言ってる」ことを合わせるならまだしも、「言ってる」ことに「やってる」ことを合わせろ、と言われているのだから始末が悪い。お前が巧いこと言い過ぎるからだと周りから責めたてられた。そんな訳で7回目は、「お前一人で行って来い」という羽目になる。
考え抜いたすえ、何枚もあったコンセプトの資料はたった一枚に絞り込んだ。入魂の一枚である。基本コンセプトは「誰にでも手の届く、2プラス2・スペシャリティー2ドアクーペ」とした。
技術コンセプトは、「FF・CVデュアルキャブ付・2 リッター130馬力」「低全高/ワイドトレッド・ダブルウィッシュボーンサス」「ローアンドワイド/ラップラウンドインパネ」。
加えてデザインコンセプトは、「パッと見て、グー」とした。「一目で分かる特徴を持ったデザイン」というところ。この頃評判になっていたテレビコマーシャルのキャッチコピー、「ハッとして、グー」をもじったものである。
もちろん、7回目は見事「うん」と言っていただく。7回という記録は、これまでの最多記録となった。チームのみんなもさすがに喜んでくれた。この一枚のコンセプト資料が、その後のホンダの機種開発企画書の雛形となった。
このころ覚えた言葉に「文質彬々(ぶんしつひんぴん)」がある。何事も「見えるところ(外見)」と「見えないところ(中身)」は「同じ」であることが良いと。その後間もなく、2リッターエンジンはレスポンスの良い1.8リッターの新エンジンに変更された。発売後、世界中どこへ持って行っても、この車は「ホンダらしい」と言われたのである。

2009年04月07日

Ⅴ ACCORDとその仲間たち(2代目プレリュード)               第13話.「怪我の功名」

2代目「ホンダプレリュード」の開発は、チームメンバー全員が「矛盾」との戦いの中にいた。無理を承知でやることも多く、中には失敗もある。発売後に、特徴の一つになった点灯時ホップアップするヘッドランプは、最初から意図して出来たわけではない。
恥ずかしい話だが、ボンネットの高さを下げ過ぎたあまり、気が付いたらヘッドランプの位置が、保安基準で定められた高さよりはるか下になっていた。認定取得を担当する部署から、「これでは認可がとれない。したがって売り物にはならない」と言われてしまう。
慌てて、ヘッドランプをホップアップさせる検討を開始。時間のない中での奮闘努力、やっとの思いで認可が取れたという冷や汗ものではあった。「怪我の功名」とでも言おうか、これが特長となって人気を博す結果となる。
そんなものだから、このあと出てきたスポーティ車はもちろん、ボンネットが高く、こんな仕掛けなど必要としない普通のセダンまで、各社こぞって採用してきた。いわば、一種のファッションをつくってしまったのである。「無理を通せば、特徴とび出る」、これはこの時に私のつくったデザイン訓。
2代目プレリュードを成功に導いたのは、「コンセプト」が誰にでも分かる明解さを持っていたこと、開発メンバー全員の「想い」が「これしかない」という気持ちで一致していたからだろう。
こうした中から、ホンダの技術コンセプトの「MM思想(マンマキシマム、メカミニマム)」が生まれた。この体験から私は、普遍性(永く万人に好かれること)と、先進性(時代に適合し未来を感じさせること)と、奉仕性(人の幸せや社会に役立つこと)の3つが高い次元でバランスされているものは、多くの人を魅了できることを知った。
不可能命題とも言うべき「矛盾」との戦いは、大変苦しいものであったが、それだけに、このプロジェクトの成功は、その分、みんなの「自信」に繋がったのではないだろうか。
市場の評価を得た初代シビック、2代目プレリュード、いずれをとっても、「これまでにない」という冠詞をつけられ、世界中の人に歓迎された。余程のインパクトがあったのだろう。いずれも、同じ様な車が続々と登場した。ものづくり屋冥利に尽きるというものである。
成功しなかった2代目シビック、初代プレリュードは、積極的な冒険を避け、安全圏を狙ってデザインしたものだったような気がする。そしてこれらを、誰も追っかけてこなかった。

2009年04月01日

Ⅴ ACCORDとその仲間たち(2代目プレリュード)               第12話.「矛盾」との戦い

FF(前輪駆動)レイアウトで100ミリ低いボンネットが実現すると、「スーパーカーのシルエットとアコードの実用性」が同時に手に入る。こんなうまい話はない。が、相容れない二つのものを一つにする、まさしくこれは、「矛盾」との戦いとも言えた。
「すぐに、チームの連中を呼べ」と言うことになる。みんなが集まったところで研究所社長は、まずエンジン屋に向かって、「おい、エンジン高さを100ミリ下げないと、会社潰れるってさ」といきなり。
もちろん、エンジンの担当は吃驚仰天。が、一見無茶とも言える投げかけに、さすが歴代の社長を輩出しているエンジン屋、「解りました」と言って仕事場に戻った。
そのとき集められたエンジン以外の艤装、ボディー、足まわりの設計担当は、誰一人、そんなことが出来るはずがないと思っていた。が、数日経って、エンジン設計担当者から、なんと、100ミリ下げることが出来たと聞かされた。
説明を聞いて、少々乱暴なやり口だとは思ったが、とにかくエンジンは下げられそうだ。エンジン以外の連中にとって、他人事のように思っていたことが、急に自分たちの身に降りかかってきたのだ。
ボンネットを低くすると、エンジンだけでなくサスペンションが飛び出し、その上、エアコンなどの装置の置き場が無くなってしまう。さらに、インストルメントパネルも下にさがって、足の入れ場が無くなる。みんな青くなって持ち場に帰って行った。
この日から、デザイナーとエンジニアとの激しいやりとりが始まる。こうした中から、これまでにない全く新しい発想がいくつも生まれ、ついにボンネットを、目標の100ミリ近くまで下げることができた。
エンジンを後ろに傾けたり、吸気系に新しいレイアウトを取り入れたり、超小型のエアコンを新規に開発したりと。また、F-1に使っていた特殊なダブルウィッシュボーンサスペンションを採用するなど、いずれも、この頃このクラスでは考えられない思い切った方法であった。
「無理を通せば道理が引っ込む」という喩えがある。が、どうしてもやりたいことがあれば、今まで営々と積み重ねてきた理論も一瞬にして壊れる。理論とはそんなものだ。今回の教訓である。
本田さんは、科学技術を信じる合理的で現実的な人であった。それでいて「やってみもせんで、何が分かる」と、出来そうにもないことを率先してやる人。しかもつねに夢に向かって、矛盾や不可能命題と闘っていた。


書名やキーワードで千夜を検索


▼松岡正剛の最新情報はコチラ
▼松岡正剛&編集工学研究所の最新情報をブログでお届け


©編集工学研究所
■ 会社概要
■アクセス
■お問い合わせ