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2007年04月06日

■建築とアートのある風景3

延藤安弘コレクション「世界の住まいとまち絵本展」
 -ちいさいおうちを覚えていますかー

友人にこの展覧会の案内をするときに『ちいさいおうち』覚えてる?と必ず聞いてみる。ほとんどの友人が「覚えてる!!あれスキだったな!」と目を輝かせる。絵本の記憶から、幼いころの気持ちが一瞬にして甦る。

バージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』は私の心の中にも残っている。幼い頃にみた水色の装丁に丸い表紙絵、その中で笑う小さいお家は、今でもこんなお家にすみたいな、と思わせる。美しいアメリカ郊外のヒナギクやせせらぎのある丘に立つ「ちいさいおうち」が開発の影響で、道路が造られ、車が走り、高層ビルや工場に挟まれ、排気ガスの曇にうずもれ、泣いている。やがて建て主により、美しいりんごの樹の丘に引越すと、もとの笑っている顔に戻りほっと安心したことが思い出される。小さいころはハッピーエンドで終わった物語も今になって読み返すとメッセージの深さに気がつかされることが多い。
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「ちいさいおうち」バージニア・リー・バートン作/いしいももこ訳 岩波書店版

延藤安弘先生は住民参加の街づくりや町育てに、住民と町を繋ぐ方法で建築に関わる。先生は町づくりのミーティングで、大学の講義のように物事の定義や歴史を説明したが住民は全く乗ってこない。そこで絵本を使ったところ、皆、身を乗り出して自分の町に対する想いを発言しはじめた。そのときから絵本の可能性を信じ、コレクションが始まったという。今回はその1500冊のコレクションをお借りして、「住み方の自由」「集まって住まうことの楽しさ」「町は織物」などのカテゴリーに分けて紹介している。環境問題、住まいのあり方、町づくり、いじめ問題、いずれも絵本からの発想の展開に可能性がみえる。激しい開発に行き場を失う猫、多種多様な人が住む集合住宅で世界一周を体験する女の子、市街地を流れるコンクリート護岸川に見つけた鴨の親子、ニューヨークの空を飛び自由の女神の前で宙返りするおばあちゃんと女の子、お互いを尊重しあうことで共に生きる方法を見つけるキツネとモグラ、子どもは絵本を文字から読むのではなく、絵を細部まで観察し読みとり、心の目で想像力の翼をひろげる。大人にとっても絵本はがんじがらめの現実を紐解き、もう一つの新しい方法を創発するきっかけになる。私も小さい時はどこか遠い星の向こうでは猫が話していて、トランプの王様が金時計を逆さに見ていて、七色のオウムガイが海を渡り、ウサギの鞄売りがパーティをしている、と想っていた。絵本をめくるたび、自然と心が柔らかくなり、感性が際立ち、イメージがふわっと広がる。
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「Abuela」Arthur Dorros 作/Elisa Kleven絵 Dutton Children's Books

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GALLRY A4


先生の活動の一つに幻燈会による読み聞かせがあり、今回の展覧会でも音楽会、シンポジウム、ワークショップと3つのイベントで読み聞かせを披露していただいた。絵本を読み解き、想像力の翼を広げながら紡がれる関西弁の言葉から、町づくりや、環境問題の困難極まりない現状を、「もう一つの観点」から「もう一つの方法」を見出す先生の哲学に触れることが出来た。『想像力とはファンタジーでも単なるイメージでもありません。「もう一つの現実」を志し、「もう一つの真実」を構成する能力です。』(展覧会リーフレット前文より)。想像力を喚起し、創発とユーモアを生む絵本の多様な可能性に触れ、感動するひと時を観客は共有した。

今、この展覧会を見た子ども達も、大人になって、未来の子ども達と、絵本を読み返す時が来るだろう。そして、きっと聞くだろう。子どものようなきらきらした目で『ちいさいおうち』覚えている?
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GALLRY A4 手作り絵本ワークショップ


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