◎むかでのいしゃむかえ
◇酒宴の席で
ファーブルさん没後90周年の酒宴の席で殿様バッタが急に腹痛をおこします。医者を迎えに行くという大任を仰せ使った節足動物唇脚綱のムカデが主人公のこのお話には、なかなか医者がこないので玄関をのぞくとムカデが汗をかきながら100本の足に履かせた「わらじ」をいじっていて、医者を連れて戻って脱いでいるのかと思いきやまだ出かけてなかったというオチがあります。
◆客席からの眺め
お客さまからお声がかかり追加のご注文を受けて手ぶらで戻ってくるフロアースタッフをみかけるとこの「むかでのいしゃむかえ」を思い出します。「人選を誤ったな」。他店の話です。
行って帰ってくる道すがら、2つ3っつ仕事を見つけ仕事を済ましてこなけば時給850円はペイできません。例えばお呼びの3番テーブルに到着するまで1番さんのお水は枯れていないか、2番さんにお済みのお皿はないか、あるいは壁のポップは曲がっていないか、黒板のメニューの文字はまだ鮮明か、たどり着いた3番テーブルさんに猛進するとみせかけて注意散[満]、帰り道にポップの曲がりを直し、お水をサービスし、皿を下げ、黒板係に書き直しを伝え、厨房に「追加のご注文いただきました」と本来の目的を伝える。
スタッフの観察もランチの楽しみになります。これが出来ているところは人手が少なく忙しいお店です。人手が多く暇なお店の従業員さんにはこの技はつきません。
百足も履いては脱ぐのが大変ですが、2足…そうですね5足位のわらじ位は下駄箱から出してもよろしいのでは? 不思議な時間を作り出すマジックの種になります。ダンドリ・ダントツ・後先編集、ルールもロールもツールも足りない時間がつくるもの。芳醇な時間に時間編集術は宿りません。
◇眺めは春風
さて、巨万の財を成すことで手一杯だった私も(まともに受けないで下さいね)四十の手習いでお茶を嗜み始めています。本日のお軸は桃花笑春風。「桃花は語らず春風に笑む」のです。上巳の節供のひな祭の今日くらい小言を控え、静かに春風に吹かれながら黙って笑いかける一日にしてみようかしら。
花は佗助、菓子はひっちぎり。いやはやお時候でございました。






